ルーマニアでの剣道


戸次さん

2022年9月より東欧ルーマニアのブカレストに駐在となりました。
口1,900万人、日本の本州と同じ程の面積のルーマニアですが、剣道の競技人口はおよそ200人程、日常的に稽古をしている競技者は100人にも満たない程度と思われます。全国で六段が3人、五段だと10人弱在籍しています。七段は未だ輩出できていません。
私が加入した道場は、ルーマニア剣道連盟の会長やTechnical Director等の要職にある方々が在籍していることもあり、週に3度の稽古に加え、ルーマニア剣道連盟主催のイベントにも時折参加しています。
私に近い世代の40~50歳の面々は、1989年のルーマニア革命以前の共産主義の時代は、空手、柔道などをやっていたそうです。民主化が進み、西側諸国や日本からの支援活動のなかで剣道が紹介され、JICAから派遣されてこられた剣道の先生方、また大使館や日系企業の駐在員で剣道をなさっていた方々に教えを請い発展してきた様です。
フランス、イタリア、UKなど他のEUの剣道先進国の様に日本人人口が多くなく、剣道の競技人口が多い環境ではありません。そのような中でも、剣道に魅了され、真摯に剣道に向き合い稽古をしている仲間たちの姿に感銘を受けます。私自身、これまでにポーランド、スイスでヨーロッパの剣道家の方々と関わってきましたが、例えば「溜め」や「攻め」など、各々の漢字の意味を尋ねられたのはルーマニアが初めてでした。一方、この時に気付かされましたが、我々日本人は「払い」「摺り上げ」「返し」等、その意味するところを容易に想像できますが、海外の人々にはこれが自然にできるわけではなく、正しい技の理解や運用のためにも初めに伝達しなければならない事なのではないか、とも感じました。
この様にルーマニアの剣道家が正しい剣道を求める姿勢は、長年にわたり継続してきた筑波大学との交流も大きく影響を与えている様です。2023年2月、筑波大学大学院生5名がルーマニアの各地方都市に2週間滞在し、各地のクラブで指導にあたられました。コロナ期間中は休止されていて3年ぶりの開催ということで、皆さん大変心待ちにしていた様です。プログラム最後の週末には、筑波大学の酒井先生も合流され、全国から参加したジュニア、シニア、ルーマニア代表選手それぞれへの強化指導をいただき、当方も追い込みなどの基本稽古に参加しました。
ちなみに参加された学生さんの中には、2021年全日本選手権で神奈川県代表でベスト8となった森山竜成選手、2022年の茨城県代表の寒川祥選手といった全国区の選手がおり、彼らの指導の通訳をする傍ら、私自身も共に学ばせてもらい、地稽古もつけていただくことができ、大変貴重な経験になりました。

海外では積極的に自ら機会を求めていかねば剣道を継続していくことが難しいのですが、一方で、普段ではできない経験を与えてくれます。自らの剣道に取り組んでいくと共に、ルーマニアの剣道の発展のために何か少しでもできることはないか、と日々考えながら仲間と共に稽古に励んでいます。

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